ブルックスブラザーズのスーツを調べると出てくる、Southwick(サウスウィック)という名前。自社工場だったのか、それとも外部の協力工場だったのか。答えは、時期によって変わります。

Southwickはもともと、ブルックスへ製品を供給する独立したメーカーでした。2008年の買収後はブルックス側のグループに入り、2020年まで傘下の製造拠点として歩みます。その後、旧工場は閉鎖されましたが、商標はSHIPSへ引き継がれ、ブランドとして再始動しています。

1929年、独立した作り手として始まる

Southwickの公式史によると、イタリアから移住したニコラスとヴィトのグリエコ兄弟が、1929年にマサチューセッツ州ローレンスで設立しました。肩パッドを抑えた自然な肩のライン、ナチュラルショルダーを特徴とする仕立てで知られるようになります。

供給先にはブルックスブラザーズのほか、J. PressやPaul Stuartなどもありました。出発点はブルックス専用の工場ではなく、複数のブランドの服作りを支えるメーカーだったのです。出典:Southwick公式「STORY」

買収前は協力メーカー、2008年からはグループ内へ

ブルックスとの取引は、買収よりも前から続いていました。2009年のAP通信の記事は、Southwickが1948年からブルックスへ供給していたと伝えています。そして2008年、ブルックスブラザーズを所有するRetail Brand AllianceがSouthwickを買収しました。出典:AP通信・新工場開設の記事(Manufacturing.net掲載)

したがって、買収前の関係は「外部の協力メーカー」、買収後は「ブルックス側のグループ傘下の製造会社・工場」と整理できます。買収後のSouthwickをブルックスの自社工場と呼ぶことは、グループ内の生産拠点という意味では自然ですが、ブルックス本体と同じ法人という意味まで含めないほうが正確です。

SHIPSのブランド史によると、傘下に入ってからも他のショップやブランドの製造を請け負っていました。ブルックス側が所有する工場であることと、ブルックス製品だけを作る専用工場であることは、別の話です。出典:SHIPS「Re:BORN Southwick」

2009年、ヘイヴァリルの新工場へ

2009年には、同じマサチューセッツ州のヘイヴァリルに新工場を開設します。前述のAP通信の記事は、新しい設備を導入し、米国内での生産を続けるための拠点として紹介しています。

このため、古い資料に登場するローレンスの工場と、後年のヘイヴァリルの工場は、場所を分けて読む必要があります。Southwickという同じ名前が出てきても、工場の所在地や設備は歴史の中で変わっています。

ブルックスのテーラード衣料を支えた重要な拠点ですが、それだけで、あらゆる年代・ラインのスーツをSouthwick製と判断できるわけではありません。個別の服の製造元は、その製品に対応する資料や表示で確かめます。

2020年、旧工場の閉鎖と商標の移転

2020年、Southwickは工場閉鎖という転機を迎えます。SHIPSの回顧記事も、ブルックスの経営破綻に伴う閉鎖として説明しています。ただし、閉鎖方針は破綻前から通知されており、当時の労働組合の発表は、従業員に7月20日を雇用最終日とする通知があったことを伝えています。出典:UNITE HERE New England Joint Board・2020年6月の発表

同年10月5日、SHIPSは、ブルックス傘下のGolden Fleece Manufacturing GroupからSouthwickの商標を譲り受けました。これはSHIPS自身が同年12月に発表しています。出典:SHIPS・商標譲受の発表

ここで引き継がれたものとして明示されているのは、Southwickという商標です。旧工場を丸ごと取得し、同じ設備や従業員でそのまま再開したという意味ではありません。

2022年、SHIPSのもとでブランドが再始動

SHIPSは2022年春、Southwickの商品展開を再始動させました。2022年4月の特集でも、伝統を受け継ぎながら、新たな提案を行うブランドとして紹介しています。出典:SHIPS「Re:BORN Southwick」

2020年の商標取得発表には「2021年秋冬から製品が登場予定」とありましたが、現在のSouthwick公式史と再始動時のSHIPSの記事は2022年としています。発表時点の予定と、その後に記録された再始動の年を分けると、経緯を追いやすくなります。

2026年9月に確認したSouthwick公式サイトでは、米国製のブレザーを中心に復活した経緯に加え、英語版のブランド史で日本生産への展開も説明されています。現在のSouthwickは、旧工場の所在地だけで捉えるより、米国の服作りの伝統を継承しながら商品を展開するブランドとして見ると分かりやすいでしょう。出典:Southwick公式「STORY」

古着では、どの時期のSouthwickかを見る

Southwickの名前を見つけたら、独立メーカーとしての時期、ブルックス傘下の時期、商標継承後の時期という順に背景を考えてみてください。ブランド名が続いていても、所有する会社や製造体制がずっと同じとは限りません。

一方、年代や製造元が分かっても、自分に合うかは別に確かめたいところです。ジャケットなら肩まわりや身幅、袖丈、パンツならウエストや股下の実寸を確認します。中古品にはお直しされたものもあるため、表記サイズだけで決めないことも大切です。

協力メーカーからグループ内の工場へ、そして名前と伝統を受け継ぐブランドへ。Southwickの歩みを知ると、一着のスーツの向こうにある、作り手と売り手の関係が見えてきます。

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